【アンダー・ザ・シャドウ】イラン発のホラー映画が怖い!
2016年に作られた、イランを舞台にしたホラー映画です。
イスラム教国であるイランのホラーって、どんなんだろう?
何となく暇つぶしのために見始めて
つまらなかったら途中で見るのを止めるつもりだったのですが、
気がついたら最後まで、思いの外真剣に見てしまいました。
これがかなり面白かったです。
監督のババク・アンヴァリはこの作品で
第19回英国インディペンデント映画賞の
新人監督賞を受賞しています。
舞台はイラン・イラク戦争下の、イランの首都テヘラン。
1980~1988年の間ということになります。
主人公のシデーは医師である夫と一人の娘をもつ主婦。
学生時代は自分自身も医師を目指していましたが、
在学中にイラン革命が起こって政治運動に走り、
医者になる勉強は一時中断を余儀なくさせられました。
その後主婦業を続けながらも医師になる夢を捨てきれないシデーは、
大学に復学して勉強を再開したい意志を申し出ますが
イラン革命時に政治活動に参加したことが原因で、
大学から復学を拒否されてしまいます。
夢が遠のいてしまったことで、失意に陥ったシデーは
イライラが募って夫や娘とぶつかり合ってしまいます。
ちょうどそんな時に、
夫のもとに召集令状が届き、
夫は激戦地に赴いて母娘の2人が取り残されます。
その間にも戦火はシデーたちに迫ってミサイル警報が鳴り、
シデーの住むマンションにもミサイルが打ち込まれますが、
不幸中の幸いで不発に終わります。
そんな時、
自宅内で娘の人形が紛失したり、人の気配がしたり、
マンション内で不審な出来事が起こり始めます。
そして、マンションの大家から、
これはジンという魔物の仕業だと警告されるのですが…。
主人公のシデーは
世間体のために外出時にはチャドルを着用しているけれど、
自宅ではタンクトップ姿で、
ビデオに合わせてエアロビクスエクササイズに励んでいるような女性。
イスラム教だけど、お祈りなどしそうなタイプではありません。
宗教には関心が薄いであろうシデーが、
ジンというアラブの悪霊の影が脅かすというが、
なんとも皮肉な状況です。
医師になる夢を実現できない絶望感や、
夫や娘とのコミュニケーションの行き違い、
戦争がもたらすストレス、
そして、宗教による抑圧など、
人生に立ちはだかるいろんな壁をしっかりと描くことで、
映画全体がちゃんと地に足がついた状態になっています。
そのおかげで、単なる荒唐無稽な話になってしまうわけではなく、
ちゃんと怖いホラー映画になっているのが
この映画の優れたところではないかと思います。
ちなみにイランの映画はこれまでに、
「桜桃の味」と「オフサイド・ガールズ」という2本しか
観たことがありませんでした。
この「アンダー・ザ・シャドウ」はそれらとテイストがかなり違いますが、
他の映画も観てみたい気持ちになりました。