【シャイニング】別格の怖さで歴史に残るホラー映画
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雪に閉ざされたホテルで家族に起きる惨劇とは?
まず主演のジャック・ニコルソンの演技が怖すぎです。上の予告編の顔も一見笑顔なのに、何でこんなに怖いのでしょうか?
映画の舞台は、冬には雪で閉ざされてしまう山の中のホテル。そんな場所に数ヶ月も管理人として滞在するハメになったらどうしますか?しかも、そこに行ってみたら「アレ」が出るという場所だったら? そんな、いわくつきのホテルで住み込みで働くことになった家族が体験する、恐ろしい物語が展開するのが、この「シャイニング」という映画。こちらもスティーブン・キング原作による 歴史に残るホラー映画の傑作です。
【原題】The Shining【製作年】1980年【製作国】イギリス、アメリカ【上映時間】119分(国際版)、143分(北米公開版)【監督】スタンリー・キューブリック【脚本】スタンリー・キューブリック、ダイアン・ジョンソン【撮影】ジョン・オルコット【音楽】バルトーク・ベーラ、クシシュトフ・ベンデレツキ、リゲティ・ジェルジュ、ウェンディ・カルロス、アル・ボウリー
【キャスト】ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイド
雄大な山を縫う道を、 1台の車がひた走るシーンからこの映画は始まります。
ジャック・ニコルソンが演ずる主人公のジャック・トランスは、 小説家志望なのですが、 けっこう年をとっていそうな風貌で小説家志望というのが、 ワケありな雰囲気を醸し出しています。 その彼が仕事として見つけたのが、 冬季に営業を休止する山中のホテルの管理業務。 仕事をするかたわら、ホテルに籠もって小説を書くのには 絶好の環境ということでしょう。
ただし、このホテルがいわくつきで、 以前、同様に管理人を務めていた男がある事件を起こしていたのです。 ジャックは事件のことは意に介さず、 妻のウェンディと息子のダニーの家族3人でホテルにやってきます。 冬山のホテルで家族だけの隔絶された生活を送る中で、 ジャックの様子に変化が起こりはじめ、 やがて、家族に恐ろしい運命が待ち受けていたのでした。。
ジャック・ニコルソンも怖いが、奥さん役もヤバい
ところで、タイトルの「シャイニング」って 英語で「ピカピカ光る」とか「輝かしい」って意味のようですが、 映画の中で何か光っているものってあったかなと思っていたら、 ダニーが持っている「特殊能力」のことを、 ホテルの料理人であるハロランが「シャイニング」と呼んでいるシーンがありました。 この「シャイニング」があるおかげで、 ダニーには以前ホテルで起こった惨劇のシーンが見えてしまうんですよね。そんな「わけありホテル」で仕事をしてみたら、やっぱり父親のジャックが「何か」に取り憑かれてヤバいことになってしまったというのがこの映画の怖さです。
この映画の怖さはまず、主演を務めるジャック・ニコルソンの 演技力によるところが何よりも大きいです。とくにホテルに移ってきてから顔の表情が別人のように恐ろしくなっていくのですが、その変わりっぷりがすごいです。
それだけじゃなくて、妻ウェンディ役のシェリー・デュバルの演技も恐ろしいです。というか、ストーリーそのものは別として演技の怖さだけ比べてみると、恐怖におののいている演技をしているシーンなどは、むしろウェンディの方が怖いんじゃないかと思えてしまいます。シェリー・デュバルの真に迫った演技は、 キューブリック監督がダメ出しを出し続けてプレッシャーを与え、 そのおかげで精神的に参っていたからではないかとも言われているようです。ほとんどパワハラですが、監督はそれくらい作品の質にこだわり続けていたんでしょう。
キューブリック監督は、この映画のポスターにもなっている、 ジャックがドアから顔を出して、恐ろしい目つきで笑うシーン(上の動画のシーン)の撮影で、 たった3秒のシーンに対して2週間で190回もダメ出しをしています。 映像へのこだわりがあるというか、超めんどくさい人だと思うんですが、そのおかげで、ホラー映画の最高傑作が完成したというわけですね。
小説を超えた映画ならではの面白さを追求
ただし、この映画の内容は原作である小説とは、 完全に内容が一致するわけではなく、かなり変わっているようです。そもそもタイトルの「シャイニング」はダニーの超能力のことなのに、霊が見えるという以外に、ダニーの超能力が活かされるシーンというのがあんまりありません。 そうした内容の変更やジャック・ニコルソンを主役に起用したことについて、原作者のスティーブン・キングは気に入らなかったらしく、その件でキューブリック監督と衝突してしまい、 後日、キングが自ら「シャイニング」をドラマ化しようとしたようです。
小説家も監督も、どうすれば映画として面白い作品になるかを追求した結果だと思いますが、小説と映画だとやはり見せ方とか展開がどうしても違ってくると思うんですよね。
小説だと登場人物の性格や感情だとか置かれている状況を、いちいち言葉で説明しなければなりませんが、映像だとそういうのをすっ飛ばして、カットをつなげると成立してしまうということがありそうです。映画の面白さと小説の面白さって、表現のジャンルが違えばやはり必ずしもどこを面白いと見るかは、違ってくるんだろうと思います。さらに、映画だと時間が限られている中で、何を見せて何を省くか取捨選択する必要があります。それでキューブリック監督の最善の答えがこれだったのかなと思います。