【ゲットアウト】繰り返して観れば面白さがさらにアップするホラー
黒人が主人公のホラー映画って、
珍しくないですか?
これまであんまり観たことがないような気がします。
黒人カメラマンのクリスは、
恋人である白人女性のローズに招待されて
彼女の家族に会いにその実家に出かけます。
クリスは黒人である自分が
ローズの家族に受け入れられるかどうか心配だったんですが、
その不安を打ち消すように、
ローズは父が黒人であるオバマ大統領を支持しているという話を持ち出して、
クリスを安心させる。
ローズの実家に到着して、
クリスはローズの家族にていねいな扱いを受けますが、
そのやりとりや言葉の端々に何か変な違和感を覚える。
彼女の実家には黒人の男女2人の使用人がいるが、
その素振りや行動もどこかしら不可解で
気の抜けたロボットのように見えます。
そして、その夜、
タバコを吸いに起き出したクリスは、
精神科医であるローズの母親から催眠術をかけられて、
知らない間にタバコ嫌いにされてしまいます。
初めて会って勝手に催眠術をかけられるなんで、
かなり怖い状況ですね。
翌日、親しい人々を集めたパーティが開かれて、
ローズの家に客が集まるが
そこでも何やら
何やら言いようのない違和感を覚えるクリス。
黒人に理解がありそうでありながら、
実際にはそういう友人が集まるわけでもなく、
招かれた客の中に唯一の黒人の姿を見つけて話しかけますが、
何やら素っ気ない反応に気落ちしてしまいます。
ということで、
ただでさえ恋人の両親に会うっていうプレッシャーに加えて、
クリスに対するみんなの対応も何かがおかしくて、
わけがわかんない状況の中でどうしようもなく居心地が悪い。
裏に何かが隠されている雰囲気。
ふだん自分が属している仲間や家族や共同体とは
違った集まりの中に入っていくと
やはり、めっちゃアウェイな気持ちを味わうことになるけれど、
どうも、この状況はそれだけではないような感じが、
映画を見ている人にも伝わってきます。
そして、その後でラストシーンに向かって
恐ろしい場面の連続となります。
ホラーとしてふつうに怖い映画です。
ジョージナというメイドが登場するんですが、
クリスとやり取りをするシーンでの彼女の表情がとても恐ろしく、
演技としてもすごいので必見です。
この作品の監督は、
ホラー映画の「シャイニング」のファンらしくて、
シャイニングでは主人公の奥さん役を演じる女優の演技が、
実は主人公よりも怖いんじゃないかと評判みたいですが、
「ゲットアウト」ではその点をリスペクトして、
女優に対する演技の要求も高かったんじゃないかと思います。
それくらい不気味な演技でした。
テレビでニュースを見ていると、
アメリカで何もしていない黒人が
警官に不当に射殺されたという報道が、
今でもしょっちゅうあります。
この映画でも差別問題が大きなテーマになっていますが、
でもこれはエンタメなので、
「いま差別問題を考える」みたいな堅苦しい議論は抜きにして、
パッと観ればだれでも楽しめる作りになっています。
そうは言っても最後の最後まで黒人が作った映画なので、
差別に対して反対する意思を強調するために、
最初に予定していたラストシーンを変更して
現在の終わり方になったようです。
「ゲットアウト」は初めて観ても面白い作品なのですが、
2回目に観るともっと楽しめる作品だと思いました。
なんかおかしい、どこか変だ、と思っていたことが
実は巧妙に張られた伏線になっていて、
一度最後まで観てから見直すと、
いろんな場面に隠されていた伏線の意味が
「ああ、そうか」「なるほどね」と納得がいき、
倍の面白さになって突き刺さってくるように思います。
何回でも楽しめる、噛めば噛むほど味が出る作品になってます。
この作品の最初のあたりで、
自宅を案内するローズの父親がクリスに対して、
「白人の家族に黒人の使用人。完全なステレオタイプだな」
というセリフを投げかけるシーンがありますが、
本当はいったい誰が誰に向かって言っているセリフなのか。
そこに、ゲットアウトという作品の
一番大事な部分があるんじゃないかと思いました。