【愛のむきだし】コメディとか悲劇とかを超越した壮大なドラマに大笑いし、号泣する。
カトリック神父の家に生まれたユウは
幼い頃に亡くなった母親が言った
「いつかマリア様のような人を見つけなさい」という言葉を胸に
父親のテツと二人暮らしをしていた。
そんなある日、
カオリという女が突然テツのもとに押しかけてきて
二人は恋仲になるが、テツは間もなく捨てられてしまう。
それがきっかけでユウはテツから
毎日繰り返し自分が犯した罪の懺悔を強要されるという
精神的な虐待を受けるようになる。
ユウは父親であるテツと親子のつながりを失わないように、
わざわざ自分から罪をつくって告白しなければならないと考えて、
不良グループに入って喧嘩をしたり、
自分自身が興味もないのに盗撮行為を繰り返すようになる。
ある時、ユウが仲間との写真の勝負で負けて
罰ゲームとして女装して街を歩いていると
ある少女が不良グループに絡まれて、
ひとりカンフーで戦っているのを見つけて助ける。
その時に、少女・ヨーコが自分の運命の女性「マリア」だと直感する。
ユウは女装のまま、自分は「サソリ」だと名乗り、
ヨーコはサソリに恋心を抱くようになる。
実はヨーコは、
ユウの父の愛人だったカオリの連れ子だった。
そして、カオリが再び
ヨーコはユウがサソリであることに気づかず、
ひとつ屋根の下で暮らすようになる。
そこに現れたコイケという謎の少女が、
彼らの運命を大きく変えていく…。
3時間57分という長編映画にもかかわらず、
まさに息をも付かせぬ展開で、
最後まで一気に見てしまいました。
コメディなのか悲劇なのかというような疑問は、
もはやどうでも良くなって、
愛と涙と感動のストーリーなどというありきたりな表現の
はるか上を行く物語に放り込まれて、
もみくちゃにされている体験を味わえます。
真面目で一途な少年・ユウを演じているのが西島隆弘。
真剣な表情でするコミカルな演技から、
情熱的な演技まで見事に演じています。
盗撮を極めようとして
撮影する時に繰り出す技の数々がものすごく、
そのアクションはいちいち技の名前をつけたくなるくらいキレがあり、
戦隊アクションものの場面のようにも見えて、
めっちゃカッコいいので大笑いしています。
ちなみに、
この映画は園子温監督が本物の盗撮のプロから聞いた話が
ヒントになっているみたいですが、
本当にこの映画のようだったら一度見てみたい気もします。
ヨーコを演じる満島ひかりがやたらカンフーが強くて、
セーラー服姿で不良たちをなぎ倒していく姿には、
ユウでなくても惚れてまうやろ!って感じです。
それに対抗するように、
安藤サクラはカルト宗教団体の幹部コイケの役で、
得体の知れない怪しいオーラを出しまくっていて、
何を考えているのかわからなさ加減が怖いです。
若い3人の俳優がそれぞれの存在感を思い切り出し合って、
バチバチぶつかり合うところが見どころでもあります。
コメディ映画でありながらシリアスなテーマを扱っていて、
アクション映画の要素が満載で、
家族ドラマでありながらラブストーリーでもある。
そんな、ひと言では語れない内容。
最後のシーンには目から涙が流れ出して、
しばらく止まりませんでした。
ちなみに、
「愛のむきだし」というタイトルは、
作品中のあるワンシーンで
誰かが誰かをさして発する言葉なんですが、
その意味を考えるとこの映画を理解する
助けになりそうな気がしています。