【遊星からの物体X】南極大陸で発掘した未知の生命体の恐怖を描くSFホラーの傑作
SFホラー映画を大きく変えた傑作のひとつが
「エイリアン」じゃないかと思いますが、
ちょうど同じくらいの時期に製作された
同じくSFホラー作品がこの「遊星からの物体X」です。
1982年に公開されたこの映画は
実は1951年公開の「遊星よりの物体X」のリメイク版です。
南極大陸の雪原を走って逃げようとする一頭の犬を
ヘリコプターから撃ち殺そうとするシーンから始まるこの映画。
逃げてきた先はアメリカの基地でした。
追いかけてきたヘリの乗員は射殺されて、犬は命を助けられるのです。
その時、実はこの犬がアメリカ基地の運命を大きく左右しようとは、
誰も思わなかったわけですね。
犬を追いかけてきたヘリはノルウェー基地のもので、
今度はアメリカの隊員たちがノルウェーの基地の捜索に出かけます。
そこで見つけてしまったのが焼け落ちた基地や無残な遺体、
そして、何らかの生物が入っていたらしい大きなバスタブのような入れ物でした。
そして、この後にアメリカ基地で途轍もない惨劇が幕を開けるのです。
宇宙からやってきたこの「物体X」は実は人間にとって未知の生命体であり、
まさにエイリアンというべき存在だったのです。
この作品はもともと短編小説『影が行く』 (Who Goes There?)を映画化したもので、
原題は1951年版が「The Thing from Another World」。
1982年版は「(John Carpenter’s) The Thing」と微妙に違っていますが、
アイデア自体は30年以上前に存在していたわけです。
これに対して、シガニー・ウィーバー主演の「エイリアン」は、
発表されのが1979年ということで、
エイリアンのほうが公開時期が早いんですね。
しかし、カーペンター監督にリメイクの依頼が来たのは
エイリアン公開の前だったようです。
製作にゴーサインが出るのに時間がかかっているうちに
「エイリアン」が先に公開されてしまったようですが、
それを観たカーペンター監督は「やられた」と思ったかも知れません。
もし、「エイリアン」の前に「物体X」が完成していたとしたら、
それぞれの内容や怪物の造形デザインなども違っていたかも知れません。
「物体X」と「エイリアン」とでは
映画の舞台が南極と宇宙の違いはありますが、
映画の発想そのものからストーリー展開、
そして、怪物の造形までやっぱりお互いに影響を色濃く受けているようです。
どっちが真似たということではなく、
お互いに高めあっているということなんだと思います。
ということで、
「エイリアン」が面白かったけれど、「物体X」はまだという人には必見です。
ぜひ観てほしい映画だと思います。
謎の生命体に寄生された人間の変貌ぶりは、
グロテスクという表現をもはや通り越しているような衝撃的なもので、
変身してしまう役の俳優たちもよくこの映画への出演をOKしたと思います。
作品で自分自身の姿が変貌していく映像を観て、
夢でうなされたりトラウマになったりしないのかと思ってしまいます。
撮影は南極じゃなくて
カナダのブリティッシュコロンビア州というところで撮られたみたいですが、
さすがに本物の南極で何ヶ月も滞在して撮影するのは、
難しかったのではないでしょうか。
ちなみに先日あるクイズ番組で、
南極に造られた宿泊施設に4泊することができるツアーの
参加費用はいくらという問題の答えはなんと1人500万円でした。
2011年には、この映画の前日談となる
ノルウェー基地での出来事を描いたらしき映画、
「遊星からの物体X ファーストコンタクト」がつくられていたようで、
この後さっそく見てみたいと思っています。
もちろん、機会があったら1951年版の「遊星からの物体X」も観て、
昔と今との違いを比較してみるのも面白いんじゃないでしょうか。