【ジェーン・ドウの解剖】怖さがどんどん加速するホラー映画の傑作
映画のキャッチコピーは
「この死体は何かおかしい」なんですけれど、
観ているうちに「何か」どころか「完全におかしい」に変わっていき、
最後は「ガチでヤバイ」という状態になります。
とにかく怖い映画です。
ある田舎町の住宅街で、
一家惨殺事件が発生し家族4人が死亡しているのが見つかります。
その家の地下室から、
家族とは関係がない身元不明の若い白人女性の遺体が、
地面に半分埋まった状態で発見されるのです。
身元がわからないため、
遺体には「ジェーン・ドウ」という仮の名前がつけられて、
警察によってティルデン遺体安置所へと運ばれてきます。
ティルデン遺体安置所では
トミーとオースティンの父子が解剖を行っていました。
息子のオースティンは仕事が終われば
恋人のエマとデートに出かける予定だったのですが、
運ばれてきたジェーン・ドウの遺体に興味をそそられて、
解剖をすることを選んでしまいます。
父と息子の二人は解剖を始めるのですが、
外見上は傷がないジェーン・ドウの遺体の内部には、
合理的に説明がつかない不可解な損傷が多く、
二人は徐々に恐怖心にとらわれていきます。
やがて、遺体安置所の中で奇怪な現象が次々と起こり始め、
父子は建物から脱出を試みるのですが…。
果たしてジェーン・ドウは本当は何者だったのか。
そして、ティルデン父子は無事に脱出できるのでしょうか。
この映画、めっちゃ怖かったです。
ホラー映画なので怖いのは当然なんですが、
そもそも遺体安置所が舞台で、
タイトルも「ジェーン・ドウの解剖」というだけあって、
当然のことですが、血を見るのが嫌いだとか、
学生時代に理科の解剖実験が苦手だったとかいう方には
まずオススメできません。
実は僕も解剖などはけっこう苦手な方で、
テレビなどの手術シーンで体の中の映像などが出てくると、
ちょっと正視できません。
だから、検視官だけは絶対になりたくない仕事なんです。
でも、ジェーン・ドウはまったく外傷がない、
無傷な状態で運ばれてくるので
最初はきれいだなと思ってガン見してしまうほどで(笑)、
その遺体を一つひとつ順を追って解剖していくところが、
まずこのホラー映画の見どころだと思います。
キレイなのとグロテスクなのとのギャップの大きさですね。
解剖シーンがどこまで実際に近いのかどうかは
本物の解剖シーンを観たことがないのでわかりませんが、
かなり忠実に再現しているんじゃないかという気がします。
肋骨を外したり、脳を取り出したり、
書いているだけで背筋がゾワゾワしてきます。
ジェーン・ドウというのは
名前がわからない女性の遺体に仮に付ける名前で、
日本で言えば「誰かさん」とか「名無しの権兵衛」のようなものみたいです。
男の場合にはジョン・ドウと呼ばれるんだそうです。
たとえば「セブン」という映画でも、
犯人のことを「ジョン・ドウ」と呼んでいました。
映画ではジェーン・ドウの体内に残された痕跡から、
その正体が少しずつ暴かれていくわけですが、
痕跡が残された理由がとてつもなく恐ろしいもので、
その謎解き要素もさらにこの作品の面白さを倍増させてくれています。
トミーとオースティンの二人は
最初はヘヴィ・メタルを聞きながら
リラックスした雰囲気で解剖を行っていて、
景気づけにはそんな曲でも聴かないとやってられんわという
雰囲気がなかなかいい感じだったんです。
ところが、ジェーン・ドウが運ばれてきてからは、
聞いていたラジオのチューニングがずれて
それまで聞いていたのとは違う歌が流れてきたり、
解剖室の蛍光灯がすべて吹っ飛んで真っ暗になったり、
どんどん室内の雲行きが怪しくなってきます。
そういう怖いシーンが、ホラー映画のもう一つの見どころですよね。
やっぱり怖いシーンがちゃんと怖くないと、何だコレということになります。
この映画の舞台は遺体安置所なので、
どんな怖いことが起きるのか何となく想像がついてしまいます。
そして「次のシーンはこうなるな」と予想していたにもかかわらず、
ちゃんと怖くてチビリそうになるので、安心してください。
ジェーン・ドウ役の女優は最初から最後まで、
解剖台の上に仰向けになって寝ているだけなんですが、
それなのにものすごい存在感を放っていました。