【ゾンビ】このジャンルの生みの親とも言えるロメロ監督の問題作

この作品はゾンビ映画の巨匠として有名な
ジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ3部作」のうち
1968年の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」に続く2作目で、
イタリアとアメリカで公開されました。
第1作目から10年が経過していますが、ストーリー的にはシリーズではなく、
お互いにまったく別の作品になっています。
ただ、原因不明でゾンビが大量発生するという点だけが共通しています。

アメリカ国内では原因不明でゾンビがあふれ始めて、
国中がパニックが発生していました。
その状況を報道していたテレビ局でも大きな混乱が生じ、
いずれテレビ局にもゾンビが押し寄せると考えたフランとスティーブンの二人は、
治安を守っていたSWATのロジャーとピーターとともに、
ヘリコプターで街からの脱出を試みます。

4人は大型ショッピングセンターを発見し、
そこに降り立ちますが、周囲にはゾンビたちが押し寄せてきています。
しかし、ショッピングセンター内には当面暮らしていくには、
物資が十分に備わっていたため、
4人は何とかゾンビを排除しながらそこで命をつなぎ始めるのでしたが…。

第1作目の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は1968年公開の白黒映画ですが、
1978年公開のこちらはカラーです。
78年というと「エイリアン」の1年前ですね。
73年に「エクソシスト」、76年には「オーメン」が発表されています。

10年経って白黒とカラーの違いだけじゃなく、
登場する人物のファッションや雰囲気も、
乗っている車やバイクなんかも違うし、
映画のとり方なんかもかなり変わったような気がします。

68年の作品ではテレビが出てきて現場中継もやっていたりしますが、
主要なストーリーはほとんどが一軒家の中で展開するので、
まだ他所んちの話という部分があったかもしれません。
それが第2作では、テレビ局もショッピングセンターもあって、
自分たちが生きている今の社会に、
いきなりゾンビが原因不明でワラワラと湧いてきて、
そこら辺を歩き回っているというリアリティがあるのが怖い。

しかも、どれだけ倒しまくってもまたどこからか湧いてきてゾロゾロと集まってくるし、
これからゾンビがいない世界に戻れるのかわからない、
戻れる保証がないということが怖いですよね。

それに、ゾンビはもともと人間だったんだけれども、
まるでモノでも扱うように倒しまくっていくうちに慣れちゃって、
ゾンビを倒すのに抵抗がなくなっていく点で、
生き残った人の人間性みたいなものが壊れていくところも恐怖ですね。

ゾンビは動きは緩慢なんだけれど、
何しろ数が多いし、うまく頭を撃ち抜かなければ倒れないので、
最初は余裕をかましていても、
気がつけば少しずつゾンビたちに追い詰められて、
仲間の助けを求めるハメになってギリギリのところで助けられたりする。
とにかくハラハラドキドキします。

これでゾンビの動きがスピーディだったら、
主人公がすぐやられてしまうんで映画も2時間も保ちません。
いやあ、ゾンビゆっくりでよかった。

それほど動きがトロいゾンビに捕まってしまうマヌケな人間が
食われてしまうシーンもありますが、
そのようすもとても怖くて、あんな最期だけは避けたいです。

マイケル・ジャクソンの「スリラー」のPVに出てくるゾンビは、
キレッキレのダンスを踊ってましたが、
あんなのが襲ってきたらアウトですよね。

ウィキペディアを見ると、
ゾンビ映画ってけっこうたくさん製作されているんですね。
最近ではドラマのウォーキング・デッドも大人気だし、
話題になった日本映画の「カメラを止めるな」も
ゾンビがモチーフになってますね。

それだけゾンビものの映画やらドラマやらは結構観ているはずだし、
この作品も1978年公開の古い映画なのに、
もうさすがに自分でも「ゾンビ慣れ」してきたのかと思っていたら、
今観てもかなり怖くて、
ゾンビが迫ってくるシーンを見ると思わず体に力が入ってしまいます。
さすがゾンビの巨匠、ロメロ監督!

救助が来るかどうか分からず、
外部にも生き延びている人間がいるかどうかもわからない状況で、
フランたち4人がショッピングセンター内で
テニスをしたりギャンブルをしたり
洋服を着飾ってみたりするのですが、
やはり閉塞感に包まれてしまいます。

やはり、周囲に人がいてこそ遊びも楽しく感じられるし、
未来があるからこそ今を生きられるのだと感じさせられます。
改めてとても虚しい気持ちにさせられて、
とにかく希望がない。

ところで、ゾンビ発生の原因は不明なんだけれど、
いきなりゾンビが大量発生し始めて人間を襲い始めるという設定は、
今では誰も「何で?」とは疑問に思わず普通に受け入れるようになったけれど、
もともとゾンビってそれほどポピュラーなものだったんでしょうか?

この映画が登場する以前にも、
数多くのゾンビ映画が発表されてきたのはさっきも書いたとおりです。
ウィキペディアの
1932年に作られた「恐怖城」というゾンビ映画のリンクが貼ってあるので、
興味がある人は観てみるといいと思います。

それで、そういうゾンビ映画が多数発表されて、その積み重ねがあった結果、
いやいや、もう回りくどい説明や前置きは抜きでいいから、
ゾンビというのは突然発生するっていうことでいいじゃんという、
暗黙の了解とかお約束が出来てきたのかもしれません。
最近はゾンビもの以外でも、
いきなり原因不明で怪現象やパニックが起きる映画が
フツーに作られています。
いきなり本題ってことでいいんじゃない、という流れなのかもしれません。

しかし、この映画が日本で公開された1979年当時は、
そもそも、日本人にはゾンビに対する認知度がなかったのかもしれないですね。
何の前置きもなくゾンビが登場してきたら、
なんで、突然死んだ人間が生き返ってウロウロ歩き回っているんだ?
ゾンビっていったい何なんだ!?
こいつらはどこから湧いてきたんだろうか?
という疑問で頭が一杯になってしまいそうです。

欧米だと土葬なのでゾンビが発生する下地があるけれど、
日本は現在では火葬が当たり前になったので、
ゾンビが蘇るという発想がないのかもしれないです。

そのため、イタリアから半年遅れて上映された日本劇場公開版では、
原因不明、意味不明というのは受け入れられなかったのか、
冒頭で惑星が爆発してその影響を受けたから
ゾンビが発生したのだという設定になっているみたいです。
時代や国によって物事の捉え方って変わってくるんですね。

ちなみに第1作目は「Night of the Living Dead」
第2作の原題は「Dawn of the Dead」。
第3作目の「死霊のえじき」は原題が「Day of the Dead」なので、
「Night」、「Dawn」、「Day」とタイトル的にはつながっていました。

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