【キャリー】ネタバレあり。怖い以上にかわいそうなホラーの名作
今回観たのは1976年に作られた本家本元の作品です。
それで、この作品には続編が99年につくられているのだそうです。キャリーは2013年にリメイクされたのは知っていましたが、続編は知らなかった。
【原題】Carrie【公開年】1976年【製作国】アメリカ【上映時間】98分【監督】ブライアン・デ・パルマ【脚本】ローレンス・D・コーエン【撮影】マリオ・トッシ【音楽】ピノ・ドナッジオ【キャスト】シシー・スペイセク、パイパー・ローリー、ウィリアム・カット、ジョン・トラボルタ、エイミー・アーヴィング
ハイスクールでいじめに遭っているキャリーは、体育の授業のあとで、クラスメイトたちと一緒にシャワールームで汗を流している時に、はじめて女性特有の生理現象になってパニックになり、クラスメイトたちの絶好のいじめの標的になってしまいます。
そのいじめを知った女性教師がクラスメイトたちを注意したことが、逆に反感を買って、キャリーをいじめる計画がエスカレートします。
キャリーがいじめられている理由の一つが、特殊な宗教にハマっている母親の存在。自分自身が結婚に失敗したのを理由に、男女間の交渉には過剰なほどに拒否反応を示して、キャリーにもそうした行為を許しません。
そんなある日、プロム(学校のダンスパーティ)が開かれることになり、なぜかイケメンのトミーがキャリーを自分のパートナーとして誘います。実はキャリーへのいじめをしていたスーが罪滅ぼしのために、トミーを使ってプロムに誘おうとしたのでした。キャリーはいったんはオファーを断ろうとしますが、本心では参加してみたい気持ちが山々で招待に応じるのです。
その一方でキャリーは自分自身がもつ超能力に気づき、違和感をいだきながらも自らの力に目覚めていきます。
そして、プロムの夜、トミーにエスコートされて華やかなパーティに参加したキャリーを待ち受けていたのは、ベストカップルコンテストで、彼女を笑い者にしようとする残酷な計画でした。
この映画はジャンルで言えばホラー映画ということになるんだろうけれど、「かわいそう映画」というジャンルがあれば、そっちの方に入れたいような気がします。ちなみに僕の分類では「ランボー」も「かわいそう映画」の一つです。
さて、キャリーでは、今風に言えば学園モノの映画に出てくるクラスカーストみたいなもののなかで、クラスを牛耳っているカーストの頂点の生徒たちから、イケていないカーストの底辺の生徒が相手にされなかったりいじめられたりという構図が出てきます。
この映画もそうした作品の一つで、最初に登場してウェーイとか言っているやつらを見ると、「こいつら最後にやられちゃうな」とピンとくるのも、お約束のパターンになってますね。
しかし、そもそもキャリー自身は、よくホラー映画に登場するような邪悪な存在ではないんですよね。
日頃からいじめに遭っている辛い状況の中から、自分自身を救い出そうと試みてそれが壁にぶつかった時に、どこにもやり場がなくて、溜まりに溜まっていた怒りが最後に爆発することになるわけです。
前半のキャリーは冴えない女の子なんだけれど、プロムの最中はメイクの影響もあるんだろうけれど、「きれい」といって全く差し支えがないルックスに見えます。それが、ホラーシーンでは一変して、目つきがまさに人間離れして見えるところは、これはシシー・スペイセクという役者の本領発揮なんだと思います。
本当に、何かスイッチが入ったように豹変してしまいます。キャリーより普通にシシー・スペイセク本人が怖い!
映画の話に戻ると、キャリーが豹変してしまったのは、キャリーの怒りが彼女を一時的に変えたのか、あるいは豚の血を全身に浴びたことで邪悪なものが彼女の中に宿ったのか。
あるいは、もともと邪悪な存在が彼女の中にあって顕在化したのか、という見方もできると思います。そうすると、本格的なホラー映画ということになってくる。
ただ、どっちにせよキャリーがかわいそうだという点は変わらない気がする。
勧善懲悪ではないけれど、最後に観ていてやるせない気持ちになると同時に、どこかでざまあみろという気分になるのは、僕だけでしょうか?
一見しょぼいけれど実は凄かったみたいな、そんなドンデン返しも映画を見る醍醐味の一つだと思います。キャリーもそんな映画です。
その後、キャリーは自宅に戻って、慰めや癒やし、母の愛を求めて母親を探すのですが、物陰に隠れて見ている母親には、キャリーの姿はもはや「怪物」にしか思えなくなっています。
でも、キャリーが家の中で母親を探すシーンは、バケモノからの攻撃を恐れおののきながら家の中を歩く、被害者的な存在に見えてきてしまうんですよね。
最期には、母親はキャリーを邪悪な存在として殺そうとし、結局殺されてしまいます。キャリーは結局誰にも受け入れてもらえないまま死んでしまうのでした。
ああ、かわいそう。
最終的に学校の生徒や関係者を含めて、みんなまとめてあの世に送ってしまい、しかも信仰心が厚い母親をも死なせてしまったというのは、結局キャリーは母親が思ったとおりの邪悪な存在だったという捉え方もできるような気がします。その意味では、キャリーと母親とのどっちが正しいというのは、わからないし、この映画の謎だと僕には思えます。
キャリーが最期を迎えるシーンでキリストの像が出てきますが、あれも、キャリーを見守っているのか、それとも邪悪な存在が神に滅ぼされたのか、どちらを表しているんだろう?とわからなくなってきました。
主演のシシー・スペイセクは、この映画に出演して女子高生を演じたときにはすでに26~27歳だったようですが、透明感ある演技のおかげで、てっきり本当に16~17歳なのかと思っていました。
勉強不足で、この映画でしか名前をしらなかったんですが、「歌え!ロレッタ愛のために」という作品で、アカデミー賞主演女優賞を獲得していたんですね。キャリーと一緒にどこかに消えちゃったのかと思ったら、ちゃんと活躍していてよかった。
また、この作品にはクリスのボーイフレンド役でジョン・トラボルタも出演しています。
この「キャリー」もスティーブン・キングの原作だということで、どんだけ小説が映画化されているんだとビックリしてしまいます。1974年作で映画は76年。映画化が早かったですね。
「キュンキュンキュンキュン!」という、お笑い芸人のハリウッドザコシショウがネタにした、ホラー映画ならではの効果音がこの映画でも使われています。ちなみにこの効果音が使われた一番古い例は、ヒッチコック監督の「サイコ」らしいです。
その「サイコ」の舞台となるモーテルの名前がベイツ・モーテルで、キャリーの通う学校名は小説ではユーイン・エレメンタリースクールですが、映画ではベイツ・ハイスクールに変えられています。この作品を作ったブライアン・デ・パルマ監督はヒッチコック監督が大好きだったようです。
そもそも、シャワールームで血が流れるシーンといえば、やっぱり「サイコ」が有名なわけじゃないですか。今頃気が付きました。いわゆるオマージュっていうやつですね。
じゃあ、そのシーンは映画でデ・パルマ監督が付け加えたのかと言うと、もともと小説にもそのシーンが出てくるようなので、スティーブン・キングが「サイコ」から影響を受けたということなのでしょうか?