【みかんの丘】アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた涙なしで観られない感動のドラマ
とても泣ける映画です。
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた作品です。
作品の冒頭では、100年前エストニア人がコーカサスへ。1992年にジョージアとアブハジアの間で紛争が起きて、エストニア系住民は北欧へ帰国する。村に残ったのはわずか数人で、数人以外村に残らなかった。というテロップが出ます。
戦争で敵対する兵士二人を一緒に助けて、同じ屋根の下で療養させたら、その後、いったいどんな結末が待っているんだろうか?
100年ほど前に、北欧からわざわざエストニア人が、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方に移民してきたのだそうです。エストニアって、地図で見るとコーカサスからメチャメチャ離れてます。この2つの地域を行き来するのって、簡単なことじゃないですよね。まさに人生をかけた選択だと思います。
物語の舞台であるコーカサス地方のアブハジアという地域は、アブハジア共和国としてジョージアから独立しようとしているのですが、ジョージアはそれを阻止しようとしている。アブハジアを支援しているのがロシアやチェチェン。というのが、この映画のごく大雑把な大前提です。
それで、紛争が激化したために、エストニア系の人たちの多くは再び北欧に戻らざるを得なかったんだけれど、中にはコーカサスに残った人たちがいたのだそうです。それが、この物語に登場するイヴォやマルゴスたちだったわけですね。
【原題】Mandariinid【製作年】2013年【製作国】エストニア&ジョージア合作【上映時間】87分
【監督】ザザ・ウルシャゼ【脚本】ザザ・ウルシャゼ【撮影】レイン・コトヴ【音楽】ニアズ・ディアサミゼ
【キャスト】レムビット・ウルフサク、エルモ・ニュガネン、ギオルギ・ナカシゼ、ミヘイル・メスヒ、ライヴォ・トラス
イヴォやマルゴスが住んでいる地域はみかんの産地。マルゴスはみかんを栽培していて、イヴォはそれを出荷するための木箱をこしらえています。豊富な収穫があるみたいです。ところが、ちょうど紛争地域に住んでいるので、爆撃などがあるのは日常茶飯事で、他のエストニア系住民はあらかた母国に帰還してしまいました。イヴォたちは軍から情報を得ながら、何とか生活を続けている状況です。
ある日、イヴォが仕事をしているところに、ジョージア軍に所属する二人の兵士が食料を漁りにやってきます。
彼らが住む地域で小競り合いがあり、生き残ったのは、さっき食料を奪っていったジョージア側の兵士と、アブハジア側の兵士がそれぞれ一人ずつ。イヴォたちは負傷した二人を救出して自宅で看病します。
生きていたのは、アブハジアを支援するチェチェン兵のアハメド、そしてジョージア兵のニカ。敵対する二人はイヴォの家にやっかいになりながらも、ケガから回復するにつれて諍いを始めて、そのたびにイヴォが二人の仲裁に入ることになるのでした。
そして数日後、微妙な緊張感がある関係の二人がいるイヴォの家に、ある時、アブハジア側についているロシア兵たちがやってきます。さて、どうなるのか。
物語の設定というか、この映画の舞台となる地域の国際情勢は複雑ですが、ストーリーはシンプルです。アブハジア側につくチェチェンの兵士・アハメドと、ジョージア側兵士であるニカが同じ屋根の下でケガの治療をすることになるが、果たして彼らの運命はどうなるのか? というお話です。
お互いに目の前で戦友が殺されてしまったので、敵意むき出しの状態です。それに対してイヴォが毅然として、二人を家の中で戦わせることはしない、相手を殺すならまず自分を殺せと宣言します。そういう責任ある態度で接することができなければ、二人を助けて看病する資格もない。そんな厳しさが必要だということ。自分だったらできない気がします。平和を守るにも覚悟が必要だということですね。
もう一つ、イヴォにはマリという孫娘がいて、目に入れても痛くないほどかわいがっていたのに、今はエストニアに行ってしまって、イヴォの家には写真が飾られているだけ。それほど可愛ければ一緒にエストニアに行けばよかったのに、なぜイヴォはそうしなかったのか。その理由も最後まで見るとわかります。
イヴォの家は整然としていて、家具や食器などもきちんとして、ここで最近まで家族との営みがあったんだろうということがわかります。
みんなかけがえのない存在があったり、夢や希望があるのに、それが戦争ですべて阻まれてしまっている。いろいろ切なくなる映画です。
それにしても、アブハジアもジョージアも、エストニアもほとんど知らないことばっかりです。かろうじてジョージア出身の力士・栃ノ心くらいしか知らない。
アブハジアというのは、グーグルマップで見てみると、冬季オリンピックが開かれたロシアのソチの少し南側にある地域です。ただ、「アブハジア共和国」という国名はグーグルマップには表示されません。国家としては一部の国にしか承認されていないので、そういう結果になるのでしょう。
グーグルマップで見ると、アブハジアがあるのはコーカサス山脈の南側の地域です。コーカサス山脈って北のロシア側と南の中東側の両方から押されて、シワが寄ったように見えます。そんな場所だから民族紛争も起きやすいのかもしれません。映画の中では、敵対する二人の兵士はそれぞれイスラム教徒とキリスト教徒で、宗教面でも対立しています。
グーグルアースで見ると、アブハジアの首都とされるスフミは上空から見るだけでも整然とした美しい街のように見えます。周辺地域は緑が多くて水も豊富そうだから、とても肥沃な土地で農産物なんかもよく穫れるんだと思います。その中の一つがみかんなんでしょう。ただ、いまだ緊張状態にある国では撮影ができないので、ロケはジョージアのグリア地方という場所で行われたそうです。
海だか湖のような場所が見えるシーンがあるのですが、あれは黒海だったんでしょうか?
原題の「Mandariinid」も翻訳サイトだとポルトガル語って出てくるけれど、本当にそうなのか、たぶんみかんという意味なんだろうけれど、正確にはよくわかりません。
小学校の社会の時間に地図帳を夢中になって眺めていた時間を思い出しました。