【マネー・ショート】世の中の考えに逆らって勝負をする男たちのスリリングなストーリー
リーマンショックを予言して債権の空売りをして
巨額の利益を得た男たちの物語を描いた映画です。
「世紀の空売り」というマイケル・ルイスの本を映画化した作品です。
この人の「マネーボール」も映画化されています。
ブラッド・ピットが製作と主演してとても面白かった映画ですが、
そちらも、弱いメジャーリーグの球団を立て直して、
最後に勝つという映画でした。
両方ともマネーに関するテーマで、
しかも、世の常識とは逆を行くという内容で、
作者のマイケル・ルイスは反骨心ある人なのかもしれません。
しかも、ブラッド・ピットもこの「マネー・ショート」にも出演し、製作にも携わっているのですが、
そういう逆転劇というか下克上的なストーリーが好きなんだろうか?
【原題】The Big Short【製作年】2015年【製作国】アメリカ【上映時間】130分
【監督】アダム・マッケイ【脚本】チャールズ・ランドルフ【撮影】アダム・マッケイ【音楽】ニコラス・ブリテル
【キャスト】クリスチャン・ベール、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット
住宅バブルが破綻して経済が崩壊するということを、
理論的に予測した男・マイケル・バーリが、
その予測をもとに莫大な利潤を得ようと企てるわけですね。
そして、その企てを偶然知ったマーク・バウムとそのチームや、
チャーリーとジェイミーの若い起業家コンビが、
やはり予想が正しいと考えて一儲けしようと考え、
空売りを仕掛けます。
普通、株などの相場は値段が上がる方にかけて利益を得ますが、
空売りは反対に、相場が下がる方に逆張りして設けようとすることです。
リーマンショック前夜には、
誰も住宅バブルが弾けるということを
想像させしていなかったので、
もし彼らの予想が当たれば莫大な利益が得られることになります。
マーク・バウムとその仲間たちは、
危険な賭けに乗るべきかどうかを確かめるために、
実際に新興住宅に足を運んでリサーチを試みます。
そして見えてきたのがバブルの危険な実態だったのです。
実際にローンを払えない住人たちが消えた新興住宅街や、
ローンを返せないとわかっていて平気で融資をする住宅販売会社、
そして、何も知らず勧められるままに家を購入する人々。
さらにプロフェッショナルであるはずの金融業界の人々も、
目先の利益を追うことに心を奪われていたり、
うすうす感づいている人々は何とかごまかしきれないかと躍起になっています。
そして、いわゆるリーマンショックと呼ばれることになる、
パニックが発生してしまうのでした。
日本語タイトルは「マネー・ショート」ですが、
原題は「The Big Short」です。
タイトルの「ショート」という言葉は「空売り」のこと。
株などに投資をする時に、
普通は安い時に買って高くなったら売るのが常識ですが、
その反対に高い時に買って安くなるほうにかける、
いわゆる空売りのことを「ショート」というんだそうです。
「マネー・ショート」だと正しい英語ではないみたいですが、
誰かの本だかWEBだかで見たのは、
原題のまんまだと映画館に来る観客に内容の想像がつかないから
あえて、そんなタイトルにしているようです。
「華麗なる大逆転」という副題もついています。
このタイトルだと相場に負けそうだった主人公が、
最後に逆転してハッピーエンドという展開を想像してしまいますが、
実際の内容はそういうことではなくて、
もうちょっとシビアな話になっています。
ウォール街で働いているような金融業界のトップクラスの人たちは
「ロケット・サイエンティスト」と言われるくらい
頭のいい人物がそろっているようですが、
だからといって必ずしも世の中の動きを見極められるというわけでもないようです。
主人公の一人であるマイケル・バーリも、
医学博士でなおかつ投資ファンドも運営している天才的頭脳の持ち主なんですが、
趣味が大音量で流れるデスメタルに合わせてドラムをたたくことだったりする、ちょっと変わった人物として描かれています。
その彼が正しい予測ができたのは、
世の中とは違う道を行くことに抵抗を感じなかったからなのだと思います。
そして、そうした先駆者の考えを先入観なしに受け入れられる資質をもった人たちが、
彼に追随していき、大きな利益を手にすることになります。
自分たちの予測が当たって大金が入ることになり、
まさに小躍りして喜ぶ若者コンビを、ブラピ扮するベンが一喝して、
バブルが破綻すれば多くの人が家も年金も失い、
命を落とす人々も大勢いるのだとたしなめます。
住宅バブルに乗ったにせよ、その崩壊にかけたのにせよ、
それで金を得ることが本当に正しいことなのか。
そして、幸せにつながるのか。
そういう問いを突き付けてくる映画です。
僕は金融関係者ではありませんが、
リーマンショックで仕事では大きな影響を受けたので、
その原因がこんなことだったのかとと思うと、
やり切れない気持ちになりました。
日本のバブル景気やバブル崩壊も、
同じような状況だったのかもしれません。
経済用語や仕組みが難しいので、
途中、観客のために登場人物たちがカメラ目線で解説してくれるシーンがありますが、
まあ、それを聞いても僕はパッとはわからなかったですけれど、
それでも最後まで楽しめる映画です。