【レザボア・ドッグス】メジャーデビュー作品からタランティーノ監督ならではの展開に

クエンティン・タランティーノ監督のメジャー映画デビュー作で、本人も強盗団の一人としてちょこっと出演しています。

他のギャング映画とは全然違っていて、いきなりそう来るかと思うのは、宝石店に押し入った強盗たちが主人公のストーリーなんだけれど、のっけから仕事に失敗してしまうんですよね。

普通だったら強盗で店内に押し込む瞬間のシーンが、映画の一つのヤマ場として描かれていると思うじゃないですか。ところが、レザボアドッグスではその場面はカットされているんです。というのは、そこに謎が隠されているからなんですね。普通ならあるはずのその場面をなくしたことで、ありきたりじゃない映画になっている。

要するに何でこいつらが集まって、その後もめることになったのかということを集中して描くことで、他のギャング映画とは全く違う斬新な作品になっています。

その「レザボア・ドッグス」の感想・レビューです。

【原題】Reservoir Dogs【製作年】1992年【製作国】アメリカ【上映時間】100分
【監督】クエンティン・タランティーノ【脚本】クエンティン・タランティーノ【撮影】アンジェイ・セクラ【音楽】カリン・ラクトマン
【キャスト】ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、クリス・ペン、スティーヴ・ブシェミ、ローレンス・ティアニー、クエンティン・タランティーノ

ということで、ざっとあらすじをご紹介します。

強盗団の元締めであるジョーとその息子のエディは、宝石店でダイヤモンドを強奪するために、6人のワルを集めて強奪計画を立てます。メンバーにはそれぞれお互いの素性が割れないようにホワイト、ブロンズ、ピンク、オレンジ、ブルー、ブラウンという色の名前で呼び合うように指示されています。

いざ計画を実行に移した6人。ところが、強奪して逃げようとしたところに警官隊が現れて銃撃戦になり、撃たれて死んだ者や、命からがらアジトの倉庫に逃げてきた者も。

オレンジが逃げる途中に腹を撃たれて血だらけになり、ホワイトが車で倉庫まで何とか運び込んだところに、ピンクがやってきて、計画が失敗したのは事前に情報が洩れていたからで、メンバーの中に警察のスパイが紛れ込んでいたのではないかと疑い始めます。

果たして警察のスパイは誰なのか? そして、強盗団メンバーの運命はどうなるのか?

最初にも書いたように、宝石店に押し入る場面は描かれなくて、いきなり車の後部座席の真っ白なシートを血だらけにして、メンバーのオレンジがのたうち回っているシーンになるので、観ている人は計画が失敗に終わったんだと知り、この後いったいどうなるんだと興味津々の状況になります。

人を集めて犯罪グループを作って、それぞれが得意技を活かしてまんまと成功するといった、「オーシャンズ11」みたいな映画じゃなくて、
強盗に失敗してその後の裏切りの犯人探しや内輪もめに焦点を当てたところが、この映画のユニークな点だと思います。

グループのメンバーにはアクの強い面々がそろっていて、それをジョーが剛腕でにらみを利かせてまとめ上げている状態なんだけれど、たとえば映画の最初のほうの場面で、メンバーの一人であるピンクは、レストランでみんなで食事をしてウェイトレスにチップを払いたくないと主張し、その理由を力説して他のメンバーたちからのひんしゅくを買い、ジョーがいなければ仲間割れしそうな予感がうっすらと漂うわけです。

ジョーとしては信頼できそうなメンバーを集めたのだと思いますが、彼とそれぞれのメンバーとの間には信頼関係があっても、メンバー同士の横のつながりがなくお互いに信じあっていないのが原因で、その後の疑心暗鬼につながっていくのです。

そして、それぞれのメンバーがなぜこのヤマに加わった経緯が描かれます。といってもそのストーリーが描かれるのはホワイト、ブロンド、オレンジの3人だけです。現場ですぐに撃たれて、その後は登場しないブルーとブラウンについては、ストーリーは紹介されません。逆にピンクはけっこう重要な役割を演じているのに、なぜか彼のストーリーもすっぽりと抜けているんですが、そこはタランティーノ監督の何らかの意図があったのでしょう。

ギャング映画っていうのはやっぱりカッコよくなきゃつまらない。悪を肯定するわけじゃないけれど、一般人が普段縛られている常識とかしがらみを超えている部分のカッコよさ。それとは裏腹に、アウトローはアウトローなりに義理人情や掟に忠実じゃないと、生きていけない部分もあるという2つに挟まれていて、そのつらさを背負って生きているところがカッコいいという部分が、とくにこの映画では強いように思いました。

このタランティーノ監督の作品では、そのあたりに「美学」を感じて作品づくりがされているんじゃないでしょうか。そういうところはドライに描きがちな、他のアメリカ映画とは違っていると感じました。

マドンナの「ライク・ア・バージン」の歌詞について、下ネタを力説する冒頭のレストランのシーンに始まり、際どいジョークもなかなか強烈です。ブロンドを演じるヴィック・ベガが、残酷なシーンでダンスを踊りながら演技をするんですが、それがまた小憎たらしいのと笑えるのとカッコいいのが混然一体となって、タランティーノ監督らしさが満載の映画です。

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