【告白】「一番ヤバいヤツはいったい誰なのか選手権」で生き残るのはあの人。ネタバレあり
「来る」の中島哲也監督が「告白」も監督していたと知って、
ほとんど10年ぶりでこの映画を見返しました。
「告白」は湊かなえの小説を映画化した作品です。
まず、小説そのものが「イヤミスの女王」と呼ばれる湊かなえさんの作品だけあって、
とても胸くそ悪い結末、いや言葉が汚かったですね、
読んだ後の気分が最悪だった記憶がありますが、
映画もきっちりと胸くそ悪い、じゃなくて気分最悪だという点が
すごい映画だと思いました。
この場合の「最悪」というのはもちろん良い映画、
素晴らしい映画という意味です、本当に。
前回は「告白」という小説を読んだ後に映画を見て面白いと思ったのですが、
やっぱり小説の印象がまず強すぎました。
今回は小説の中身をほとんど忘れかけていたのですが、
そのおかげで映画としてシンプルに見ることができて、
改めて面白いと感じました。
そして、きっちり胸くそ悪かったです。
【製作年】2010年【製作国】日本【上映時間】106分【監督】中島哲也【脚本】中島哲也
【撮影】阿藤正一、小澤篤史【音楽】金橋豊彦
【キャスト】松たか子、岡田将生、木村佳乃、芦田愛菜、西井幸人、藤原薫、橋本愛
自分が担任であるクラスの生徒に最愛の幼い娘を殺された女性教師が、
復讐の鬼と化して、犯人の生徒たちに復讐を果たすという映画です。
中学生が凶悪犯罪を起こしても
まだ子供だし将来もあるんだからしょうがないじゃないかみたいな
甘い考えは一切通用しない世界観をもった作品です。
ある中学校で1年生のクラスを受け持つ森口悠子(松たか子)は
自分の幼い娘をクラスの生徒2人に殺されてしまいます。
事件は「事故」としてうやむやに処理されていたのですが、
森口はその年の終業式の日に、
クラスの生徒たちに対して娘を殺したのは同級生のAとBだと公表し、
その二人の給食の牛乳にHIV患者の血液を混入させたと宣言します。
森口が事件のあった学校から去っていった一方、
Aと呼ばれた修哉は同級生たちによって過酷ないじめを受けるようになり、
Bの直樹は精神的に追い詰められて不登校になってしまうのです。
修哉はその後も世間の注目を浴びたいがために
大きな事件を引き起こしたいという気持ちをいだき続けていたのですが、
一方、学校を去った森口の復讐も実はそこで終わったわけではなく、
巧妙なやり方でじわじわと続いていたのでした。
さてその結末はどうなるのか?
少年犯罪に対する取り扱いが最近はだんだん厳しくなってきているとはいえ、
やはり少年法の壁に守られていて甘いところはまだまだあります。
そのことをよくわかったうえで人を殺した少年が、
14歳以下だからといって許されていいのか。
そのことを強く問題提起した作品だと思います。
森口の復讐は徹底したもので、たとえ相手が中学生であっても容赦がない。
その森口の復讐劇を演じる、松たか子の演技がとにかく怖いです。
物語が進むにつれて、修哉が犯罪を起こしたのは、
自分を捨てた母親に振り返ってもらいたいからだというのも
理由の一つだと明らかになりますが、
でも、そんなことは娘を殺された母親である森口には全然関係がないのです。
中学生が起こした、本人はいっぱしの悪のつもり起こした殺人事件でしたが、
心の底から復讐心に燃える大人からしてみればやり方が甘くて、
本気で復讐を誓う大人が心血を注いだ用意周到な計画には
子供が考えた思いつきなどひとたまりもなかったのでした。
この「一番ヤバいやつは誰だ選手権」で
中でも一番ヤバかったのは森口だったわけです。
最後のシーンの彼女の最後のひと言まで、怖いです。
この映画は森口が受持ちのクラスの生徒たちが、
騒ぎまくっているシーンから始まりますが、
クラスメイトたちがどれだけ軽薄で調子ばっかりいいのかを、
ダンスを踊っているシーンで表現したり、
体育館の床に生徒たちが血を流して倒れているシーンを
天井から俯瞰して撮影したカットなど、
映像の様式美を追及したようなシーンもあって、
いろんなチャレンジをしている映画だと思います。
プールに投げ込まれた幼女を演じていたのが芦田愛菜だったり、
美月役を演じた橋本愛がいかにもまだ中学生な感じだったり、
のん(能年玲奈)も出ていたみたいだけど存在に気づかなかったり、
10年の歳月が流れたんだなと思いました。