【セブン】この結末に愕然!知っていて観てもやっぱり目が離せない展開(多少ネタバレ)
とても細かい字でびっしりと何かが書かれたノートや、
不気味な写真が貼り付けられたスクラップブックのようなものを、
誰かがまとめている映像が
冒頭のタイトル・ロールに使われているんだけれど、
それを見るとこれはヤバいやつが出てくる予感で一杯になります。
その「セブン」の感想・レビューです。
【原題】Seven【製作年】1995年【製作国】アメリカ【上映時間】127分
【監督】デヴィッド・フィンチャー【脚本】アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー【撮影】ダリウス・コンジ【音楽】ハワード・ショア
【キャスト】ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン、グウィネス・パルトロー、ケヴィン・スペイシー
目次
雨の大都市で起きた連続殺人事件
舞台は雨が降り続くある街。
ベテランのサマセット刑事が新たに起きた殺人事件を担当することに。サマセットはあと7日で定年退職が決まっています。そこに新たに着任したミルズ刑事が訪れて、バディを組むことになります。ミルズは経験不足だけれど気持ちだけはいっぱしの刑事ぶって、サマセットに変わって自分が事件を仕切りたい気持ちでいっぱいです。
その翌日、異常な殺人事件が発生しますが、サマセットは長年の経験から、この事件が単なる殺人ではないと直感。最初から連続殺人事件だと推測して、捜査が長引くはずの事件を、あと1週間で定年を迎える自分が担当すべき事件ではないと辞退しようとする。
一方、ミルズはその翌日に起きた弁護士殺人事件を担当するが、その事件がサマセットが担当する連続殺人事件とつながっていることが判明して、二人はこの連続殺人事件に否応なく巻き込まれていくのです。
そんな矢先にミルズの妻・トレーシーがサマセットを夕食に招待する。新しい街になじめないトレーシーだったが、夫の相棒を夕食に招いたことで、それをきっかけにミルズとサマセットの距離が少しずつ縮まるが、
二人は懸案の連続殺人事件の解明に乗り出すのだが、その先には思いも寄らない結末が待ち受けているのでした
対照的な二人がバディを組む
「セブン」というタイトルには、キリスト教の「7つの大罪」という意味にくわえて、サマセットがあと7日で定年になるという意味や、この作品でクライマックスのシーンが夕方7時というのもあったりします。ちなみに「7つの大罪」というのは、高慢、物欲、嫉妬、怒り、色欲、大食、怠惰なんだけれど、それが連続殺人を解明するキーワードになるのです。「7」といえばラッキーナンバーのイメージが強いですが、この映画では逆にアンラッキーの象徴みたいな扱いになっているんです。
雰囲気が陰気臭いのもこの映画らしさで、ずっと雨が振り続けていて見ている側でも暗い気持ちになってきます。連続殺人事件の犠牲者が見つかるシーンなんかはとくに陰惨です。
事件の舞台になっている街の名前は具体的には出てきませんが、たぶんニューヨークのような大都市なんだと思います。雨が降り続く陰鬱な雰囲気の街にやってきた若手のミルズと、定年退職間際のベテラン刑事サマセットがバディを組んで、難事件に立ち向かうという映画です。
ブラピが扮するミルズは若くて経験がないけれど、功名心と血の気が多いタイプの刑事。一方のサマセット役のモーガン・フリーマンは、
沈着冷静で事件の深層に入り込んで探っていくタイプの渋いベテラン刑事。ミルズが帰宅後にプロバスケのテレビ中継を見ている間、サマセットは図書館で勉強をしている。どっちのタイプがいい悪いじゃなくて、たまたまそういう二人がバディを組むことになったということですね。
サマセットとしては、もう辞めたい気持ちでいっぱいだし、連続殺人事件が退職日までに解決できるはずもないと思っているんですが、長年の習性で事件の謎をつい追いかけてしまう。さらに、ミルズがあまりにもスキだらけで心もとないので、こんなのに任せておけないという思いで事件に関わっていってしまうんですね。
ミルズは仕事での功名心がいっぱいですから、ガンガンいきたいわけですよ。その結果、経験も考え方も違う二人なんだけれど、結局はお互いの持ち味を生かして、少しずつ犯人に近づいていくことになります。そして犯人逮捕に近づいて一件落着かと思ったら、これが予想外の方向にストーリーが展開していくわけですね。
シリアルキラー物のパターンを壊した結末
この作品では連続殺人の現場は殺人行為そのものは描かれず、現場に残されたいろんなものが克明に描かれています。犯行の結果だけが描かれていますが、そのどれもが、ちょっと想像しただけでも、自分がその犠牲には絶対になりたくないという残酷なものばっかり。
連続殺人事件を題材にした映画っていうのは、普通だったら刑事や探偵が事件の謎解きをしていって、最終的に7つの大罪の最後の犯行が行われている最中に、サマセットとミルズがギリギリのタイミングで犯行を阻止して、一件落着っていうのが普通のパターンです。ところが、この作品ではそうは問屋が卸さない。
作品の中盤ではサマセットとミルズが、意外と簡単に真犯人の居所をつかんでしまうのですが、そのことで、犯人が大きく犯行の計画を変えて結末につながっていく。物語としての方向性も大きく変わっていくのが、この作品の一筋縄ではいかないところ。
犯人の居場所が判明したとき、犯人には追いかけてきたミルズに銃を突きつけて頭を吹き飛ばすチャンスがありました。ところが、なぜ殺さなかったのか? それは想定外のなりゆきでミルズを殺してしまうと、現在進行中の「7つの大罪」という連続殺人のコンセプトが壊れてしまうわけです。そして、銃を突きつけている数秒の間に、頭のいい犯人は別の計画を思いついてしまうという恐ろしい展開になります。
これによって普通の刑事モノの映画の枠から外れていくんですが、今までにない従来とは違う映画をつくってやろうという思いがひしひしと感じられます。
いやあ、そんな展開ってありかよと思ってしまいます。
一方で、サマセットは自らのアイデアで犯人を一度は追い詰めたけれど、逮捕できなかったためにその後の展開が大きく変わってしまった点で、サマセットも責任を感じるかもしれない部分ではあるよね。
サマセットも定年間際にとんでもない事態になってしまい、それこそ「なんて日だ!」と言いたくなるような映画だと思います。
映画の中ではジョン・ドゥという言葉が出てきて、これは「誰かさん」とか「名無しの権兵衛」みたいな意味らしいんだけど、ミルズたちが犯人のことをジョン・ドゥと呼んでいました。ちなみに、女性の場合はジェーン・ドゥというらしく、「ジェーンドゥの解剖」という超怖いホラー映画のタイトルになっています。こちらも必見のホラーです。
俳優たちの演技がヤバい
サマセットが夜ひとり眠れずに、ダーツの的に向けて黙々とナイフを投げるシーンに戦慄を覚え、人間は日頃、心にどんな思いを抱きながら生きているのかわからないと思いました。
グウィネス・パルトロウが可愛らしくて、どこかはかなげな奥さん役を演じていますが、この後、現実の生活でもグウィネス・パルトロウとブラピは婚約したんでしたね。この映画ではそれほど登場シーンは多くはないけれど、少し陰がある妻としての演技が印象的で、こんな奥さんがいたらええなあと思ってしまいます。
ケビン・スペイシーやばい。ちょどこの「セブン」の直前に公開された「ユージュアル・サスペクツ」でも、ケビン・スペイシーが重要な役どころで出演していますが、どちらの作品でも、同じように足が悪い役を演じているのは偶然?