【密航者】NETFLIXの宇宙サスペンス。予期しなかった搭乗者の正体とは?(ちょっとネタバレ)

冒頭はロケットの打ち上げシーンから始まりますが、こういう映画って、ロケットが故障するのか、未確認生物に襲われるのか、あるいはAIが反乱を起こすのか、とにかくドキドキする展開を期待してしまいます。タイトルも「密航者」ということで、いろんなことを思い浮かべてしまいます。どうなるんでしょうね。

その「密航者」の感想・レビューです。

【原題】Stowaway【公開年】2021年【製作国】アメリカ、ドイツ【上映時間】116分
【監督】ジョー・ペナ【脚本】ジョー・ペナ、ライアン・モリソン【撮影】クレメンス・ベッカー【音楽】フォルカー・ベルテルマン
【キャスト】アナ・ケンドリック、トニ・コレット、ダニエル・デイ・キム、シャミア・アンダーソン

2年間の火星探査の旅に紛れ込んだ密航者

船長のマリーナ、医者のゾーイ、学者のデイヴィッドの3人のクルーが、宇宙船で火星探索のミッションに旅立つシーンからスタートします。無事に打ち上げられて、何とか軌道に乗った宇宙船は、火星に向けて2年間の引き返せない旅に出発しました。

航行が軌道に乗ってひと息ついた頃、船長のマリーナがロケットの壁面パネルから血が滴っているのを発見します。不審に思った船長が調べてみると中から出てきたのはなんと黒人男性。彼は一体何者なのか? そして4人の運命はどうなるのか?

密航者が侵入した目的に呆然とするクルーたち

密航者というタイトルから最初に予想したのは、この黒人男性のマイケルは何か目的があって侵入して、その後火星に行くまでの間にクルーたちとの間で大きなバトルが持ち上がるんだろうということでした。

ところが、この映画の場合はちょっと予想外というか、意外な展開になってしまいます。それはマイケルは打ち上げに参加していたエンジニアなんですが、単に手違いで宇宙船内に取り残されて、宇宙まで来てしまったようなんです。要するにマイケルは単なる一般人が間違って宇宙に来ちゃったということだったんですね。目的とか悪意とかそういうのはないということなんです。

「密航者」の原題「Stowaway」は、「無賃乗車」みたいな意味もあるみたいなんです。どっちかというとそちらの意味の方が近いのかも。

というのは、この宇宙船には3人分を想定して酸素を積み込んでいて、しかも酸素発生装置がこのマイケルのせいで壊れてしまうわけなんです。限られた酸素を消費するんだけれど、それに対してマイケルはなんの代償も払うことができない。だって宇宙飛行の訓練を受けたわけではない単なる一般人ですから。だけども息も吸うし食事もする。宇宙船にタダ乗りしちゃっているわけですね。

命を救おうとする行動が皮肉な結果に

これはたしかに大変な困った状況です。地球上にいれば単に無害な一般人なんですが、宇宙ではとても厄介なマイナス要因になっちゃったわけです。それで、地上の宇宙センターと相談するけれど、やはり決定的な解決策が生み出せなくて、10日後を期限にマイケルの命を奪わなければならないという決断に迫られるのです。

これはちょっとキツイ。自分たちの命を守るためとはいいながら、何の罪もない人を一人死なせなければならないわけですから。するとデイヴィッドがこっそりとマイケルに対して、安楽死できる薬剤を自分で注射するように、注射器を手渡すんです。ところがそれをゾーイが発見して、思いとどまらせる。デイヴィッドは他の二人の精神的な負担を最小限にして、しかも火星探査の任務を果たすために最善の決断をしたのだと思います。

そして、解決策を検討した結果、ドッキングした宇宙ステーションの反対側にあるはずの酸素タンクを取ってくれば、何とか酸素を保たせることができそうだということになり、ゾーイとデイヴィッドがその任務にあたるという展開になるわけです。

マリーナがゾーイに最終的な作業を任せるのだけれど、これも冷静に考えれば無謀な話で、もし失敗したら医者がいなくなってしまうというのは、その後のミッション遂行が難しくなっちゃうと思うんだけれどどうなんだろう?

しかし、最終的な結末はとても皮肉な結果となってしまうのです。

ツッコミどころ満載だけど最後までドキドキ

それにしても、そもそも発射前に宇宙船内に取り残された作業員が、発射前の点検などでそのまま見つからずに一緒に来てしまうということがあり得るのか? また、旅客機の場合だと密航を企てて機体の倉庫部分に忍び込んだ人が、上空の気温や気圧が低いおかげで死んでしまうというのを聞きますが、このロケットの場合は大丈夫だったのでしょうか? それから、酸素は大丈夫だったとして水や食料はどうだったんだろうか? ちょっと突っ込もうとすれば、ツッコミどころが満載です。

宇宙船をゆっくりと回転させて人工的に重量を発生させているおかげで、宇宙船外の作業をする場面でも、重力に邪魔されて苦労するシーンなんかもあって、そういうところは新しい発見もありました。でも、それだったら命綱つけろよとか、ものが落下しないようにロープでしっかりつなげとか、あと、宇宙船どうしを接続している支柱にハシゴとか付けとけよ。

エイリアンみたいに異星人とバトルするわけじゃないし、あんまり派手な展開にはならないけれど、けっこうドキドキしながら観てました。

この作品はアメリカとドイツの合作映画だということです。でも、宇宙食でソーセージとビールが出てくるのかなと思ったら違いました。言葉は英語だしあんまりドイツ風な感じがしませんでした。生き残りをかけて誰が命を捨てるのかという点で、ちょっと哲学的なところがドイツ風ということなのでしょうか?

この映画は登場人物が白人女性2人、アジア系男性1人、アフリカ系男性1人という構成で、ドイツとアメリカの合作映画ですが、最後まで白人男性が登場しないというのも特徴的ですね。これって、いわゆるポリコレに配慮した結果なのでしょうか。そのあたり、キャスティングの意図も知りたいです。

船長のマリーナを演じているトニ・コレットは、「へレディタリー/継承」で母親役を演じて、映画史上の残りそうな恐怖のシーンを演じていましたが、思い出しても背筋がゾクゾクします。

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