【殺人ホテル】NETFLIXのサスペンス・スリラー。ディナーショーに招かれた飢えた客たちが遭遇する恐ろしい運命とは?
この「殺人ホテル」はノルウェーで製作されたサスペンス・スリラーです。原題の「Kadaver」は「死体」という意味のノルウェー語だそうです。「殺人ホテル」というタイトルは、日本向けにNETFLIXのスタッフが付けたのだろうか? とても映画の内容がわかりやすく、オチまで予想がついてしまうというなかなかの評判のタイトルです。
その「殺人ホテル」の感想・レビューです。
【原題】Kadaver【製作年】2020年【製作国】ノルウェー【上映時間】86分
【監督】ヤーラン・ヘルダル【脚本】ヤーラン・ヘルダル
【キャスト】ギッテ・ウィット、トーマス・グルスタッド、ソービョルン・ハール、キングスフォード・シアヨール、マリア・グラツィア・メオ
核戦争らしき出来事によって荒廃した都市。街は荒れ果てて道端には死体が転がっています。作品は若い夫婦と幼い娘の3人が帰宅するシーンから始まります。
自殺者も出るほど絶望的な状況の中で、街の高級ホテルで慈善ショーが開催されるという宣伝カーがやってきて、家族3人で観にでかける。
ホテルの大広間では豪華な料理が振る舞われ、その後、参加者たちは金属製の仮面をつけて、館内で行われるショーを見物するように促されるのです。
家族3人は何かがおかしいことに気づくのですが、やがてお互いを見失ってバラバラに引き離され、恐怖の体験に引きずり込まれることになるのでした…。
目次
核戦争後の街の高級ホテルで開催される謎のショー
ノルウェーの映像って普段そんなに見ることがありませんが、冒頭で映し出される街の風景は、これは首都のオスロなんだろうか? きっと美しかっただろうと思われる街が、完全に崩壊したわけでもなければ、かといって全く元の通りでもない、その微妙な荒廃ぶりがなかなかグッと来るものがあります。そして、自分たちの身の回りで、近未来にこういうことがないとは言えないと思ってしまう映像です。そういう絶妙な世界観がクセになりそうな映画です。
そして、食糧不足に見舞われて、誰もがまともに食事がとれず飢えかけている状況の中で、街の高級ホテルがタダ飯を食わせてくれて、しかもショーを見せてくれるといえば、きっと僕もノコノコと出かけていくだろうなと思います。
ホテルで参加者たちが本当に美味しそうに肉にかぶりつくシーンは、腹が減ったときの食べ物は何者にも変えられないなと思わされます。しかし、文字通り美味しい話には必ず裏があるわけで、この後、参加者たちには恐ろしい出来事が降りかかるわけなんですよね。
食事の後で、今度はホテル全体を舞台にしたショーが始まり、参加者は館内を歩き回って、そこで「演者」が演じている「劇」を見ることになります。この「劇」は館内のあちこちで行われているので、参加者の集団がだんだんバラバラに離れていって、そして…。
演出がやや中途半端で盛り上がりに欠ける?
来場した参加者には金属製のマスクが配られるんだけど、これがまたブキミな雰囲気を醸し出しています。実はこのホテル内では、仮面をつけている人は観客、つけていない人は演者という区分けがあって、それが運命を左右する鍵になるんですね。
そして、日本向けタイトルの通り、やってきた観客たちをある目的で次々と殺していくわけなんです。ところが、娘のアリスがいなくなっちゃったりして、慌ててマスクを外した母親のレオが、そのおかげで命拾いをするわけです。そして、危険な目に合いながらもホテルじゅうを回ってアリスや夫を探し回るのですが、ハラハラさせられます。
ホテルの支配人であるマティアスはいかにもひとクセありそうな人物像で、この人の言うことを素直に信じちゃいけないよという匂いがプンプンしまくりです。彼が大広間のステージ上に立って観客たちにショーの説明をするシーンは、何となくデヴィッド・リンチ風の雰囲気があって、これからヤバいことが起きるんじゃないかという予感が満載で、ドキドキしてしまいます。
ただ、ちょっと演出が残念で中途半端な感じがしました。たとえば、壁にかけてある絵画に描かれた豚の頭の目が動いて、それに驚かされるとか、それって何十年前の話なのかって感じです。あるいは、仮面をつけている参加者たちがどういう運命をたどったのかを、たとえば一人ひとり追い詰められて消えていくとか、集団で大パニックになって惨事が起きるとか、もっとハッキリとした演出で見せてくれたらよかったなと思います。
映像の感じなんかは陰鬱なヨーロッパの雰囲気が現れていて、けっこう良かったんですけど。
核戦争後の世界で食べ物をテーマにした映画といえば「デリカテッセン」が思い出されます。また、ホテルを舞台にしたホラーといえば「シャイニング」という金字塔があります。この「殺人ホテル」はその合せ技みたいな映画を目指したのだろうか。両方ともファンが多い映画だと思うので、そこを乗り越えて新しい世界観を打ち立てていくには、けっこうなパワーが必要なのかなと思いました。