【羊たちの沈黙】サスペンス・ホラーと見せかけて、実は恋愛映画だった!?
この羊たちの沈黙。
とてもおもしろかったけれど、1回観ただけで完全に理解することが難しかったです。というか最初観ているうちに、いろんな思いや感想が湧いてきて、何度か繰り返し見てしまいました。
【原題】The Silence of the Lambs【製作年】1991年【製作国】アメリカ【上映時間】118分
【監督】ジョナサン・デミ【脚本】テッド・タリー【撮影】タク・フジモト【音楽】ハワード・ショア
【キャスト】ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン
目次
あらすじ 凶悪犯の助言をもとに連続殺人を追いかける
主人公は、文字通り「肉食系男子」であるハンニバル・レクター博士と、彼にヒントを求めながら、連続殺人事件を追うFBI捜査官研修生のクラリス・スターリング。
連続殺人事件の犯人であるバッファロー・ビルを追い続けるFBIのクロフォード主任捜査官は、 捜査の参考にするために、 凶悪犯罪で収監されているハンニバル・レクター博士から助言を得ようとしていましたが、 レクター博士から協力を拒否されていました。クロフォードは事態を打開するために、研修中の女性FBI捜査官であるクラリス・スターリングを使って、レクターからアドバイスを引き出すことを画策します。
クラリスは面会したレクターに気に入られて、事件に関するヒントを与えられます。そして、クラリスは何度か面会を重ねながら、最初は一時的な使い走りだったはずの案件にどんどんのめり込んでいきます。
その間にも犯行を重ねるバッファロー・ビル。 果たしてクラリスはバッファロー・ビルを探し当てることができるのか。
一本で何通りにも楽しめる奥深さ
この映画の面白さはいろんな楽しみ方ができるという点にあると思います。 だから何度観ても楽しめます。
たとえば、犯罪の足跡を分析しながら、犯人のキャラクターや行動特性を推測して、 事件の解決に結びつけていくプロファイリングという言葉は、今では当たり前に使われるようになっていますが、この言葉が知られるようになったきっかけは、やはりこの映画あたりがきっかけになったのではないでしょうか。日本で何か大きな事件が起きると、アメリカからプロファイリングの専門家が緊急来日して、特別番組を放送するということもありました。そうした謎解きという知的でスリリングな側面から楽しめる映画だと思います。
その一方で、 主人公がFBIアカデミー実習生の若い女性だということも、この映画をよりスリリングにしている点だと思います。
頭脳明晰なレクターからすれば、FBIのやり口はとっくの昔にお見通しであるだけに、自分に差し向けられたクラリスという実習生が、美人で聡明ではありながらファッションセンスもどことなくもっさりとしていて、世間ズレしていない部分に興味や好感をもったという点もあると思います。
アカデミーの実習生という立場でありながらも、事件の解決に結びつく情報を何とか引き出そうとするクラリスと、彼女を精神的にもてあそぶようにしながらも、少しずつヒントを提供するレクターとの息詰まるようなやりとり。そこにレクターもある意味、恋愛ゲームの駆け引きや楽しみのようなものを感じていたのかも。
クロフォードからの支持によるヒアリングは一度だけの予定だったはずが、その後、クラリスは単独行動に近い形でもレクターを訪れて、禁じられた自分自身の個人情報の提供をしてしまいます。それは、ダメだとわかっていながら何度もつい密会を重ねてしてしまう、ある意味、一種の恋愛関係のようにも思えます。
一方のレクターは、FBI捜査官と犯罪者との鉄格子をはさんだ対立関係を超えて、クラリスの個人的な生い立ちを引き出すことで、精神的なエクスタシーを得ているとも考えられます。
その裏返しとして、どれだけ頭脳明晰なレクター博士であっても、若いクラリスの美貌には心動かされるという、実は恋愛映画的な要素をもった作品なのだと思います。
スマートなエリートのクロフォード捜査官と、知的だが野獣のような内面を兼ね備えたレクターと、そして、その間で揺れるクラリスのあたかも三角関係ともいえる駆け引きが、この映画を面白くしている隠し味なのではないでしょうか?
映像面では犯罪現場のシーンのディテールがすごくて、描かれている世界観はかなりグロテスクなんですが、見方によっては美しいといえなくもない…、いえないか?
いろんな側面から何度でも楽しめる作品です。