この世に私の居場所なんてない|ごく普通の女性が主人公のコメディが一転してサスペンスに(若干ネタバレ)

主人公はどこにでもいるようなごく普通の女性・ルース。看護助手として病院に務める彼女が自宅で空き巣に入られたことをきっかけに、犯罪グループと命がけのバトルを繰り広げることになる、ある種、とんでもない映画です。

最初はコメディタッチなんだけど、それがだんだんガチなサスペンスに変わっていって、最後には主人公のルースが命がけでサバイバルする。普通の人が気がついたら事件に巻き込まれている、その紙一重な感覚をうまく描いた作品だと思います。

【原題】I Don’t Feel at Home in This World Anymore【公開年】2017年【製作国】アメリカ【上映時間】96分
【監督】メイコン・ブレア【脚本】メイコン・ブレア【撮影】ラーキン・サイプル【音楽】ブルック・ブレア、ウィル・ブレア
【キャスト】メラニー・リンスキー、イライジャ・ウッド、デヴィッド・ヨウ、ジェーン・レヴィ、デヴォン・グレイ

ついてない1日が、やがてとんでもない事態に

その日、ルースはついていない1日を過ごしていた。

勤務先の病院で最期を看取った患者の最後の一言が、とても家族に伝えられないような内容だったり、読んでいた本のネタバレをされたり、自宅の前に犬の糞をされたり。

そして、その日の不運の極めつけは、自宅に空き巣が入ってパソコンと祖母の形見の銀食器が盗まれてしまったことだった。

盗まれたパソコンのGPS情報がスマホに表示されたので、取り戻しにいこうと考えたルースは、自分の前に犬の糞を放置した隣人・トニーに手助けを求めて、一緒にその家に乗り込みます。そして、奪還に成功するものの、その後で二人は思いもよらない事態へと巻き込まれていくのです。

主人公は気弱そうな女性介護士と偏屈な忍者オタク

主人公の女性・ルースは、映画のヒロインとしてはパッとしない感じの女性です。性格的にも気弱そうに見えるタイプなんですが、その反面、正義感が強くて、正しいことが行われないとそれに反発する気持ちをもっている。

一方、ルースの手助けをすることになるトニーも、ちょっと偏屈そうであんまり周囲とうまくやっていくタイプには見えません。やっぱり妙に正義感が強くて、しかも忍者オタクでヌンチャクや手裏剣の練習をしていたりするものだから、敵に回すと面倒くさいタイプです。

ルースもトニーも、世渡りが上手いというタイプじゃなくて、どこか不器用ながらも、何とか日々の生活を送っているような人間だったりするわけです。

その二人が盗まれたパソコンを奪還するために、かなりヤバそうな雰囲気の家に乗り込むんですが、そのシーンが最高に笑えます。

そして、なんとかパソコンを取り戻すことに成功して、二人で酒を飲みながらはっちゃけるシーンがいい。ほんとに嬉しかったんだろうなというのが伝わってきます。そこまではコメディタッチの映画だという印象です。

でもパソコンを取り戻したところで終わらせていればよかったのに。自分たちの力だけで何かを成し遂げたという勢いで、今度は銀食器を取り戻しに行く。さらには、ルースは誰が盗んだのか、警察がなかなか動いてくれないので、その犯人を自分で見つけ出そうとするのです。

庭に残った犯人の足跡の型を取ったり、本格的に犯人探しを始める。そこからストーリーがだんだん妙な方向に進んでいくことになるのです。いつの間にか日常の世界から犯罪者たちがはびこる世界へと足を踏み入れていく。その展開がとてもおもしろいです。

自分から戦いに挑んでいったその結末は?

後半は、犯罪行為とは無縁そうなルースとトニーが、思いも寄らないスリルとサスペンスとバイオレンスの世界に巻き込まれていって、それで、銃弾や刃物が飛び交う中であたふたしながら、必死でサバイバルすることになる。作品の冒頭からは想像もつかない展開が、予想の斜め上すぎて、ハラハラどきどきしてしまいます。

でも、これは単に犯罪に巻き込まれたというのじゃなくて、戦いとはちょっと縁が遠そうなルースなんだけれど、自分が選んだまさに「戦い」なんです。「みんながクソッタレにならないために」、自分から悪との戦いに挑んでいく。この自分から戦いに挑んでいったという点が最大のポイントというか、この映画の肝心な部分なんだと思います。

なんで、そういうふるまいに出たのか?

この作品の冒頭のような、ついていない一日は、実はルースにとっては日常茶飯事なんだと思います。でも、その一方で、理不尽なことや納得がいかないことに対して、いつかは解決したいと思っていたのかもしれないです。それで、空き巣をきっかけにこの世を自分の力で変えられないかと思ったのかも。

でも実際には自分を取り巻く世界は何も変わらない。この先に良いことなんか何もないのかと打ち砕かれて、閉塞感も抱きながら、何だか憂鬱そうな表情を浮かべている。

作中に「ただの炭になるんだわ、命は簡単に終わる、テレビを消すみたいに」というルースのセリフがあるんですが、その言葉どおりに、登場人物たちがいきなりケガをしたり命を落としたりして消えていく。そして、ついにはトニーも刺されてしまうんです。

しかし、ルースは弱者なのかなと思っていたら、事件に巻き込まれても、実は最後までしぶとく生き残り続けるという。そして、「この先、いいことなんか何もない」と思っていたルース。その結末は…。

トニーは「ロード・オブ・ザ・リング」のフロド役

ルース役のメラニー・リンスキーは「ドント・ルック・アップ」で、ディカプリオ扮する教授の妻役を演じていました。トニー役のイライジャ・ウッドは「ロード・オブ・ザ・リング」のフロド役で有名になった俳優だったんですね。「ロード・オブ・ザ・リング」は見ていなかったので、知らなかったんだけど、ちょっと変わり者の役がぴったりハマってました。

作品の最初のほうで、ルースが読んでいた本のネタをバラしてしまうオッサン役で登場しているのが、監督のメイコン・ブレアなんだそうです。

ちなみに、僕もある昔のドラマを楽しみに見ている人に、ついうっかりネタバレ情報を口にしたら、ものすごい形相で睨まれたことがあって、注意しようと思いながらも、このブログでうっかりネタバレ情報を書いちゃったりしています。

ところが、最近は本や映画のストーリーのネタバレをされても、その方が作品への理解が深まったり、安心して見られたりするので、ネタバレ歓迎という人も増えてきているみたいですね。

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